受け継がれてきたものを、どう繋げていくか

ビジネスコネクトふじのみや(以下、「ビジコネ」)で、「ものづくり補助金」についての相談及び事業計画書の作成を支援。

  • 富士丸西牧場
  • 業種:酪農業
  • 創業:昭和27年

3世代にわたって受け継いできた酪農

私たちは祖母の代から約70年以上、富士山のふもとの朝霧で3代にわたって酪農を続けています。
この牧場の特徴は、雨の日と冬の畑に草のない時期以外は放牧していること。
放牧する牧場は最近どんどん減ってきていていますが、牛の生活環境を一番に考え、さらには基盤整備されていない畑や急傾斜地を有効活用する意味でも放牧を続けています。
そうして育てた牛から搾った牛乳を富士の国乳業(※)で販売したり、学校給食で使ってもらったりしています。

※「富士宮の子供たちに地元で採れた新鮮で美味しい牛乳を飲んでもらいたい 」と地元の酪農家達が結束し、2016年に設立。

牛から乳を搾るために、土づくりから初めて、いい牧草を作って、いい牛を育てて、という一連の流れにこだわりを持っています。その一環として放牧にもこだわっていて、毎日の乳質検査では常に良い数値を目指しています。
牧場に来ていただいたお客様にはお茶代わりに牛乳やパンをお出しするのですが、それがとても好評で。その味が忘れらないと言ってまた来てくれるお客様もいらっしゃいます。

酪農家が作ったパン「パン工房あさぎり」

もともとこの場所は戦後に開拓者が酪農を始めた地域で、食べ物も飲み水もないような荒れた土地だったそうです。
その時に配給された小麦粉を使って、各家ごとに無水鍋でパンを作っていた、という文化があったそうで、我が家でも祖母の代からパンを焼いています。そのパンを市のイベントやご近所の方のリクエストに応える形で「パン工房あさぎり」を立ち上げ、本格的に販売するようになりました。

ここのパンの特徴は、水を一切使用していないこと。
当牧場の搾りたての牛乳を使って焼く伝統的なミルクパンや、そのミルクパンのレシピに「富士の国乳業」で開発した【PREMIUM ヨーグルト】を加えた「牧場(まきば)のおもてなしパン」などがあり、毎週土曜日にキャンプ場で直売させてもらっているのですが、お客様からは「素朴な味で美味しい」と、好評を頂いています。

支援を受けて

数年前に商標に関する事で市に相談した際、ビジコネを知りました。
そしてビジコネが開催している創業支援セミナーを受講して、ものづくりから売り方、ブランドの作り方などを教えていただきました。特にSNSの発信の仕方では、私たちにとっての日常が、見る方にとっては感動的な非日常であることを教えてもらい、それから毎日写真や動画を投稿しています。

今回、アイスクリームの加工や充填に必要な機械設備を「ものづくり補助金」を活用して購入することを検討していて、そのサポートをビジコネにお願いしました。

申請には事業計画書の作成が必要だったのですが、ビジコネの専門家の方たちに教えていただきながら、なんとか完成させることが出来ました。ビジコネがなかったら途中でくじけていたと思います(笑

補助金の事だけでなく、ビジコネを通じて知り合った様々な事業者の方々と交流したり情報交換したりというのが今も続いていて、それも私たちの助けになっています。

現在力を入れているA2ミルク

「A2ミルク」というのは、日本人の3人に1~2人くらいの割合でると言われている、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロしやすい乳糖不耐症の方でもお腹がゴロゴロしにくく安心して飲める牛乳です。海外では既に注目されていて、オーストラリアではお店の冷蔵庫の約1/3はA2ミルクが売られているところもあるようです。

いま日本で流通している牛乳の多くは「A1型」の牛から搾ったものですが、遺伝子検査で選別された「A2型」の乳牛から搾った牛乳はお腹がゴロゴロしにくく、もちろん味も変わりません。

私も子供のころから牛乳を飲むとお腹がゴロゴロしてましたし、そういう方は多くいらっしゃると思います。
冷蔵庫で冷えた牛乳をお風呂上りや運動のあとに飲むことができるなんて、A2ミルクは私にとっても人生が変わるくらい衝撃的な牛乳でした。

これから創業を考えている方へ

富士宮市は、いろいろな窓口が熱心に話を聞いてくれます。右も左もわからない状態でも力になってくれます。創業支援セミナーで知り合った方々も次々にお店を出したり、自分の夢を形にしていますので、夢だけで終わらせないでちゃんと前に踏み出すことができる場所だと思います。

私たちのベースにあるものは70年続いている牧場です。歴史あるパンを残したい、美味しい牛乳を届けたい、この景色を残したい。そんな思いがベースにあって、受け継がれてきたものをどういうふうに繋げていくか、その手段としての事業であり、様々な人からサポートを受けながら、小さいながらも一歩づつ前に進んでいきたいと思っています。

事業者情報