お客様の声を大切にし、嗜好品としてのお茶づくりを磨き続けたい

ビジネスコネクトふじのみや(以下、ビジコネ)にて、商標登録・その他資料作成等のサポート。
- 株式会社富士園
- 業種:製茶業
- 創業:昭和40年
富士園の歴史

私の祖父の代から茶業に携わっており、当初は畑を中心とした「生産農家」としてお茶づくりをしていました。その後、自社工場を建てて製造まで行うようになり、当時は市場への出荷が中心だったようです。私が物心ついた頃にはすでに市場出荷はなくなり、スーパーへの卸や軒先での直売へと移行していました。また、現在運営しているネット通販も約30年前から着手しているようです。
当時、社長は「市場出荷では価格競争になってしまう」と感じていたそうで、特に静岡県西部の産地と比べて出荷が遅れるほど価格が下がるため、早い段階で市場出荷をやめ、直売に力を入れるようになりました。軒先販売やネット販売を続ける中で、約14年前、東日本大震災の頃にあさぎりフードパークが誕生し、当社もそこに店舗を構えることになりました。その頃私は外部で研修生をするなどして、社会経験を積んでおりましたが、プレオープンは4月で、社会情勢もあり大々的な宣伝はせず、静かにオープンしたと記憶しています。
特徴・魅力について
他の生産者さんもそれぞれ工夫をされていますが、自社の店舗を持っている生産者は意外と少ないなと感じます。軒先販売をしている方は多いものの、店舗を構えることで消費者と直接繋がることができ、声を聞きながらお茶づくりに生かせるのは大きな強みです。
地元のお客様はもちろん、東京や大阪など県外から訪れる方も多く、静岡茶への価値観や地域ごとのお茶文化の違いを直接伺うことで、商品構成を考える視点が広がりました。お店を持つことで得られた経験は、企業としての成長にも繋がっていると感じます。
近年では、タイなど海外から訪れる個人旅行者も増えており、清水港に寄港したクルーズ船から訪れる方もいらっしゃいます。目的はやはり富士山観光が中心で、西麓エリアを巡るルートの中で当店に立ち寄ってくださるようです。
また、Instagramを見て来店されるお客様も多く、富士山を眺めながら食事やお茶を楽しめるロケーションが好評です。周辺にはカフェが少ないこともあり、「静岡茶」という言葉に惹かれて訪れる方も少なくありません。
お茶の魅力を伝えるカフェと商品づくり

お店のオープン当初からカフェスペースは設けていました。今ほどメニューは多くありませんでしたが、最初からお茶を主役にしたスタイルで、マグカップ一杯のお茶に少し茶菓子を添えるというシンプルな形でした。現在もその基本スタンスは変わらず、「お茶そのものを味わっていただく」という想いを大切にしています。
メニュー開発は社内で行っており、妻がアイデアを出すこともあれば、従業員が考案することもあります。私はどちらかといえば職人気質で、お茶そのものにはこだわりますが、コーディネートやトレンド的な発想は得意ではありません(笑)ですが、「お茶の魅力を伝える」という軸はぶらさず、急須で淹れる王道の静岡茶を中心に提供しています。新メニューを増やすよりも、一杯のお茶を丁寧に届けることを大切にしています。東京など県外のお客様の中には、その伝統的な静岡茶のスタイルに価値を感じてくださる方も多いです。そうした声に支えられて今の形を続けられているのだと思いますね。
提供しているお菓子には地元・富士宮市内の事業者さんの素材を使用しています。お隣の上野製菓さんの柚子羊羹は定番で、えいちのむらさんが当社の緑茶パウダーを使って作るパウンドケーキも好評です。また、最近では市内名月堂さんの上生菓子もお茶菓子として使わせていただいており、その芸術的にデザインされた練り切りは、私がお茶に向き合う姿勢と通じるものを感じています。さらに、夏季限定メニューの「和紅茶サイダー」は、当社の和紅茶とれっどぱーるさんの冷凍イチゴを使った人気メニューで、爽やかな香りと渋みを楽しめます。秋冬には朝霧牛乳を使った「チャイ」を提供しており、季節ごとに変化するお茶の魅力を、これからも丁寧に伝えていきたいと思っています。
商標を取ろうと思ったきっかけ

当社の商品パッケージは、商品によって既存の袋を使用していたので、デザインの統一感がありませんでした。スーパーなどで見かける一般的なお茶のパッケージが並ぶ中、「どれが富士園のお茶なのか」が分かりづらい状態だったのです。お茶というのはスイーツのように見た目で差をつけにくい商品だからこそ、見た瞬間に「富士園のお茶だ」とわかるようなデザインにしたいと思いました。
また、お客様に長く覚えてもらえるブランドをつくるために、まず自社の顔となるロゴマークを定めることが大切だと感じ、今回ビジコネに相談しました。ネット販売にも力を入れていく中で、オンライン上でも「富士園」という名前を印象づけたいという思いもありました。専門家の方の支援を受けながら手続きを進めるうちに、商標を取ることは単に名前を守るだけでなく、自分たちの想いを形にし、長く愛されるブランドを育てる第一歩なのだと実感しましたね。
商標登録の際に大変だった事
最も苦労したのは「富士園」という名称でした。既に同名の商標を登録しているお茶屋さんが県外にあり、さらに当社のロゴの下に入れていた「FUJIEN」の表記も認められませんでした。音が同じですと申請が通らないことを知り、かなり悩みました。明朝体やゴシック体で「株式会社富士園」と入れる分には問題ないものの、単体での「富士園」表記は不可とのことで、一度は申請を却下されました。その後、「富士園」の部分を修正して再申請した結果、ようやく申請が通りました。これからは、このロゴマークとともに「富士園」という名前をしっかり浸透させていきたいと思っています。
今回、ビジコネにサポートしてもらい本当に助かりました。色々と進める中で、無料で専門家支援を受けられたのは非常に有難かったです。自分で調べながら進めていたら、業務の合間で時間も手間もかかっていたと思います。専門家の方や市職員の方々にノウハウを教えていただき、とても助かりました。
現在力を入れているサービスや今後の展望

当社は生産から製造・販売まで一貫して行うメーカーです。お客様の声を大切にしながら、嗜好品としてのお茶づくりを磨き続けています。お茶には多くの品種があり、全国的に多いのは「やぶきた」ですが、当社では8種類の品種を保有しています。それぞれの品種に合った加工を行い、例えば「べにふうき」は紅茶専用品種として使用しています。品種選定から製造、パッケージングまで一貫してこだわることで、お客様のライフスタイルに合ったお茶を提案できるよう努めています。
また、あさぎりフードパークで開催された「富士山イケ麺フェスタ」では、「茶そば」を提供しました。お茶の風味がしっかり感じられる一品で、ご来店いただいたお客様からも大変好評でした。他にも、イオンモール富士宮や東京・国際フォーラムで行われた特産品イベントにも出展し、都市部で静岡茶に関心を持つ多くのお客様と出会う貴重な機会となりました。今後も、こうした場を通して積極的にPRをしていきたいですね。
尚、当店舗は「アンテナショップ」という構想ですので、あえてこの場所に足を運んでいただき、BtoB・BtoC両面の交流の場として活用していきたいという思いがあります。富士山の伏流水を使用しており、地元の水で地元のお茶を淹れることが、お茶本来の味わいや香りを最も引き出せると感じています。その土地の水で淹れたお茶を味わいながら、富士山の麓ならではの空気や雰囲気を体感していただけるのは、この場所ならではの魅力です。
現在は、お子さまから大人の方までを対象にした「ブレンドティー体験」のワークショップを行っています。お茶が生まれた場所の空気を感じながら、自分だけの一杯をつくる体験を楽しんでいただけるよう、今後はこのワークショップの充実にも力を入れていきたいと考えています。都市部に出店すれば集客は安定するかもしれませんが、あえてこの地でやることに意味がある。それが私たちの強みであり、武器だと思っています。
これから創業する方へ
やはり創業には「心」が大切だと思います。コロナや世界情勢、景気の変動など、外部の要因で状況はいくらでも変わります。その中で一番重要なのは、「なぜ自分が創業したいのか」という動機が正しいかどうかだと思います。まずその“心の軸”がしっかりしていれば、次に経済的な仕組みや手段をどう乗せていくかを考えればいい。もし動機が間違っていれば、きっと途中でうまくいかなくなった時に心が折れてしまいます。逆に、明確な動機があれば、どんな課題があっても乗り越える力になる。最初から理想の形にたどり着くことは難しいですが、試行錯誤しながら進む中で何度も初心に立ち返ることが大切です。原点に戻ることで、きっとその都度“答え”が見えてくるのだと思います。
事業者情報
- 店名:株式会社富士園
- 住所:〒418-0101 静岡県富士宮市根原449-17
- 電話番号:0544-52-0988
- 営業時間:9:30~16:30
- 定休日:木曜日
- ホームページ:https://shizuokafujien.com/
- オンラインショップ:https://fujienochanet.com/
- Instagram:https://www.instagram.com/fujien_japantea_art/
- X(旧Twitter):https://x.com/Ocha_fujien