商品を売るというよりも、ストーリーを売る

飼料高騰などの影響に伴って必要となった対策の一つである設備投資に関する相談、補助金申請をビジネスコネクトふじのみやでサポート。

  • 株式会社いでぼく
  • 業種:生産・加工・販売
  • 創業:1960年

祖父の代から受け継いだ、牛乳の仕事

現在いでぼくでは乳牛を飼育して乳を搾り、生産から加工・販売まで行っています。
創業から変わらず「衛生管理」を一つのテーマとして良質な生乳の生産に力を注いでいます。

祖父の代で酪農を始め、自分たちで牛乳を販売する事業形態がスタートしたのはおよそ27年前。
朝イチで搾った生乳をすぐに工場に持ってきて加工する、これができる酪農家はあまり類を見ないと思います。これを実現しているのは牧場と工場の距離感で、通常は牛舎と工場が離れて稼働しているため、生産から加工までは時間がかかるのですが、いでぼくでは牛舎を衛生的に保つことで工場を併設することが可能になり、搾りたてをスピーディに加工することができる、僕たちならではのシステムをとっています。

どうしてこんな手間とコストがかかることをしているかというと、通常酪農家が絞った牛乳は指定生産者団体(農協)に集められて出荷されるのですが、これは愛情込めて牛を飼育して、綺麗に牛舎を管理して、品質のいい牛乳を絞っている酪農家であろうが、言い方は悪いですが何も工夫せずにエサだけあげて牛乳を搾っている酪農家であろうが、検査さえ通れば同等に扱われ、同じタンクで出荷されます。
それなら、愛情込めて生産した牛乳には自分たちで価値を付けて販売してお客様に届けたい、と考えたのがはじまりです。

正直大変な事の方が多いです。生き物を飼育する仕事の大変さも子どものころから感じています。
ですが、それを悲観的に思ったことはありません。
祖父の代から頑張って続けてきた事業ですし、せっかくつないでくれたものとして大事にしたいと考えています。

多様な事業展開とこだわり

現在は牧場の一画にある「ミルクハウス」や人穴の「COW RESORT IDEBOK」の他に、道の駅や県内や県外のサービスエリアやパーキングエリア、それに多数の提携先店舗にていでぼくの味を楽しんでいただくことができます。
また、「COW RESORT IDEBOK」ではチーズ工房やBBQ・キャンプ、グランピングエリアも設置して、幅広い年代層の方向けに様々なサービスを提供しています。

もちろん牛乳屋として牛乳を飲んでもらいたいというのが一番強い思いです。
ですが、形や品を変えてもお客さんが興味を持っていただけるものであればそれでもかまいません。
アイスでもチーズでも、どの商品でもギリギリまで沢山牛乳を使用しているので、加工品でも「より牛乳に近い」ものというこだわりを持って提供しています。

僕らは商品を売るというよりも、ストーリーを売ることに力を入れています。
商品自体よりもその裏側にあるものをお客さんに伝えたいと考えていて、それがちゃんと伝われば、どこでいでぼくの商品に触れたとしても、最終的には牧場に興味を持っていただけるし、富士宮にも興味を持ってもらうことができる。それを発信し続けることに意味があると思っています。

今後の展開

これまでずっと牧場のブランディングに力を入れてきました。これからも「いでぼく」のブランド価値はもっとあげていかなければならないですし、そこにゴールはないと思っています。
サービスエリアなど中心に展開して来ましたが、今はそこにプラスアルファできるものを探しています。徐々に着手していることもありますが、簡単ではないですね。

地域を盛り上げる活動、地域活性化につながる活動をしている企業や団体など色々ありますが、僕らは富士宮の外に出てお店を持つことによって富士宮の活性化につなげようと事業活動を行っています。
富士宮の外で富士宮のものに触れて、次に近くに来た時に「せっかくだし寄っていこう」と思ってもらえれば、必ず街は賑やかになっていきます。
「富士宮にはおいしい物がある」となれば自然と人が注目する。その分母が大きくなればその中から実際に来てくれる人も増える。
そういう活性化ができれば、と考えて今後の展開にもつなげていきたいと思っています。

設備投資で補助金を導入

これまでは購入するのが一般的だった飼料ですが、昨今の高騰や円相場の影響で、これまで通り飼料が買えなくなってきました。そのため、土地を借りて自分たちで飼料を作る酪農家が増えてきています。
僕たちも例外ではなく、飼料を作るために土地や堆肥など様々ななものが必要になってきました。
そしてもちろん設備投資も必要になり、富士宮信用金庫さんに相談したところ補助金のことを教えてもらい、導入までを手伝ってもらったんです。

申請自体は、富士宮信用金庫さんがかなりバックアップしてくれたので、こちらの手間はかなり軽減されたと思います。
補助金の大変な所は、将来の計画の立案だと思います。1年で様々な事情が変わることもありますし、事業の把握以外にも不確定要素が多いので。
とはいえ、申請は勿論のこと付随する情報提供もあり、協力してもらって本当に良かったと思っています。

仕事をするうえで大事にしている事

事業を成功させたいのであれば、人と同じことをしてたらダメだと思っています。
僕は自分のことを凡人だと思っていますし、頭が特別いいわけでもない。であれば人と違う事で勝負しないといけない。
あとは簡単にマネできることは長く続かないと思います。「ここならでは」というものがないと、長く勝負できないのではないでしょうか。それには常に先のことを考えておくことが大事になってくると思います。

僕は365日欠かさずに寝る前に牛舎の掃除をして餌を補充することを日課にしています。
だいたい18時か19時には牛舎の明かりを消す酪農家が多いと思いますが、うちは明かりを消すのが夜中の0時。
ばからしいことかもしれないし、そんなことしている酪農家はいないと思いますが、そうすることで他の酪農家が気が付かないことにも気が付くかもしれない。なんでもいいから他の人がやらないこと、牛のためになることをする。精神論的なものもあるでしょうけど。
継続する事、初心を忘れないこと。そういう事を大事にしています。

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