3人のこだわりが融合した事業形態

富士宮市空き店舗等対策事業補助金を利用した店舗の開店をサポート

  • カフェ・ニッチ/食遊よしざわ
  • 業種:飲食業
  • 創業:2023年12月

一つの店舗を活かす2つのお店

【店舗オーナー 吉澤 茂さん】
もともと私たちの両親から継いだ呉服屋をやっていまして、のちに弟の勲が吉澤ゼミナールという学習塾をやっていました。今は両方とも閉業していますが、使っていない母屋があったので、何か生かす方法を探していました。
そこで、従妹が南部の方で料理を出したりする宿泊施設を運営しており、弟(勲さん)は自然保護の活動などをやっていたため、この空き家を活用できないかと相談しました。

私自身仕事を辞めてからは家具作りなどをしており、店舗を建てるなら地元産の材料を使う事にこだわりを持っていました。例えば店舗で使用している木材等は、元々母屋だった建物で100年近く使用していたもの、例えば床の間の一部や欄間など、呉服屋だった建物を生かして使っています。他にも、材料は天然木材で地元産のものだけを使用しています。
私は店舗の運営には関わっていませんが、活用する二人の要望をできる限り反映したものを作ろうと努めて、結果この形になりました。

カフェ・ニッチ

【カフェ・ニッチ マスター 吉澤 勲さん】
「カフェ・ニッチ」はコンセプトがはっきりしていまして、
私は富士宮の野鳥の会南富士支部に参加しているのですが、愛好家たちが集まれる場所や発信できる場が少ないと感じていました。
兄(茂さん)からこういう空間づくりの話をされたときに、週一日だけでもそういった場所を作ることができたら、と考えて自分も加わりました。
また、学習塾をやっている時から自然環境や地球環境に興味を持っていて、犬山にある日本モンキーセンターのオープンキャンパスに通うまでになり、そこで類人猿の研究者達の話を聞いたり、その活動について話す機会が増え、3~4年前にタンザニアでの研修にも参加しました。
そこで非常に感銘を受け、このカフェがジャングルやチンパンジーの為にちょっとでも関心を持ってもらえる場になれたらと考えました。

このカフェでは、関心を持ってもらうためのきっかけとして、類人猿たちが暮らしている場所でとれるコーヒー豆を使用しています。
森を守るためにはそこで暮らしている人たちを自立支援することが必要になる。そのため売上が農家の方や研究者に行くような流通の仕方をしているものをお店で出しています。
来られたお客さんにもコーヒーについてお話することで、自分の飲んだコーヒーがほんの僅かでもジャングルやチンパンジーを助けているということを知ってもらえるし、興味関心を持ってもらえるきっかけになることがこのお店の目的だと考えています。

コーヒーはフェアトレードのもの、さらには動物の暮らしに関係しているものを優先して問屋から購入していますが、どれも味がとても美味しいものばかりです。色々取り揃えていますが、うちのカフェではタンザニアのチンパンジーコーヒーがおすすめです。
お店自体は週1回土曜日のみ営業していますが、来ていただいたお客さんにもとても好評いただいています。

食遊よしざわ

【食遊よしざわ 店主 北山さん】
食遊よしざわは、日曜日から火曜日までの3日間こだわりの身体にやさしい料理をお出ししています。
有機農家の方たちと長く交流させていただいていますので、実際に野菜を見て収穫してからその週の献立を決めています。地元の野菜だったり、地元でなくても、他にはない育て方をしている食材を使用しています。例えば、興津川の近くでひよこの時から自家製の玄米で育てた平飼いの鶏の卵とか。
調味料も、醤油は小豆島の樽で作ったものを取り寄せていますし、味付けも麹や甘酒を使ったりしてこだわりぬいた身体に優しいお料理を提供しています。
食事を終えた方には、隣の部屋でデザートや季節ごとのハーブティーを楽しみながら、特注の音楽を聞いたりと、お客様が自分だけの時間を楽しめるような空間づくりにもこだわっています。

一つの店舗に2つのお店が入っているので、美味しいコーヒーが飲みたい方には土曜日を、身体に優しい料理を食べたい方には日・月・火曜日にいらっしゃって下さい、とそれぞれアナウンスしています。お互いのお店の評判もちゃんと聞こえてくるんです。そういうところも楽しいですね。

補助金を受けて明確化したもの

【店舗オーナー 吉澤 茂さん】
お金が潤沢にあったわけではないので、時間をかけて古民家再生のようにやっていくつもりでしたが、幸いにも補助金の話があり、そこから一気に話が進んでいきました。
もともと商店街の街づくりにずっと関わってきていたので、空き店舗補助金の事は知っていました。でも具体的な内容までは知りませんでしたし、実のところ最初のうちは申し込みが多いので補助金を受けるのは難しいと言われていました。

ですが、市役所や商工会議所に相談し、丁寧に対応していただくことができて、その時点で色々な見通しや自分たちの方向性を明確にすることが可能になり、結果その後補助金を受けることができました。

当初は「何年もかけて趣味感覚でやっていこう」くらいに考えていたものが、実際に補助金を頂くことになると、それなりに成果も出さなければならない。だから事業内容や計画を明確に考えざるを得なくなりました。採算の取り方や維持して継続していくための課題解決方法など、趣味ではすまない部分も見えてくる。
当然補助金だけでは足りず、自分の負担も必要で、そうなるとやはり事業の採算の見通しが必要になってくる。そういう時にちゃんと相談にのってもらえる機関があるのはありがたかったですね。

【カフェ・ニッチ マスター 吉澤 勲さん】
出だしはかなりアバウトな形ではありましたが、兄から補助金の件や、自己負担の費用の事、オープン時期についても聞いていました。
なので自分のやりたい気持ちとやりたい事、そして当然ビジネスの面でも考えて、続ける事、思いをキープすることを第一に考えました。
それも補助金がきっかけだったと思います。

今後の展望

【店舗オーナー 吉澤 茂さん】
幸いにも今のところ好評をいただいているので、出だしは順調だと思います。ただ、私としては空いている曜日の活用方法を考える必要があるな、と感じています。例えばイベントやミニコンサートを開くといった余地はあるかと思っていますが、もう少し定着してから、二人と相談しながら進めていければと考えています。

【食遊よしざわ 店主 北山さん】
民芸品の作家さんにも、こういうお店ができたことを世間話的にお伝えしたりして、お店のことを少しずつでも広めていっています。
ハーブ園をなさっている方にはワークショップのアイデアを頂いたり、柚野商店の平野さんはお披露目の時に来て下さって、お互いに助け合いながら富士宮を元気にしていこう、と話しています。

【カフェ・ニッチ マスター 吉澤 勲さん】
自分のカフェも、横のコミュニケーションの中心的な場になっていってほしいというのが理想でして、まだ2~3ヶ月ですけど、いろいろな方が来て下さって、横の広がりも増えてきています。コーヒーを焙煎している方からはワークショップのお話がありましたし、野鳥の会の方からは野鳥に興味を持ってもらうための場所としての活用を一緒に考えて頂いたり、野生動物のことに興味を持ってもらう、定期的に話を聞ける場をつくっていきたいと考えています。

若い創業者たちに向けて

【カフェ・ニッチ マスター 吉澤 勲さん】
富士宮にもユニークな取り組みを始める若者が増えてきていて、おもしろい人や場所にはユニークな人が集まるものだと、妻と話したりもしています。

【食遊よしざわ 店主 北山さん】
特にインスタグラムの反応がとても良くて、最初のうちは投稿したとたんに電話がなりっぱなしでした。お電話で予約を承る際に、どこでお知りになったかを伺うと、大体の方がインスタグラムの投稿を見てくれていたんですね。そういう経緯で来られたお客様はとても印象的な方ばかりでしたよ。

【店舗オーナー 吉澤 茂さん】
ちょっと前と違って、広告の形が紙媒体からソーシャルメディアに代わってきています。世の中、予想以上に変化していて、その変化にも驚くと同時に、つくづくネットの時代だなと感じました。
そういうものが得意な若い人たちが増えてきていますので、どんどん活用するべきだと思います。

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