富士山麓で描くまちづくりの未来

ビジネスコネクトふじのみや(以下、ビジコネ)で、展示会出展にあたっての補助金情報の提供や申請支援、マッチングを通じた業務連などをサポート
- 富士設計株式会社
- 業種:建設業
- 創業:昭和37年
富士設計が挑む、防災とまちづくりの役割

当社は昭和37年創業で、富士宮市を拠点に地域に根ざした建設コンサルタント業を展開しています。設計というと建築をイメージされるかもしれませんが、当社の主業務は土木分野、つまりインフラ整備の設計や調査、測量です。道路や橋、川、公園といった公共施設に関わる計画から設計、その基礎となる調査や測量までを手がけています。
私たちはこれを「まちづくり」と呼んでいて、単に図面を描くだけでなく、地域の安全と暮らしやすさを支える仕事だと考えています。例えば、富士山のふもとに広がる白糸の滝周辺の整備や、富士山世界遺産センター近くの駐車場設計、浅間大社横のふれあい広場の設計などのプロジェクトにも関わってきました。
また、近年では高度経済成長期に建設された橋や構造物が老朽化し始めており、それらを再建するのではなく、どう補修し、延命させるかという視点での点検や診断業務も増えています。加えて、富士山という特殊な地形の影響で、火山性の土壌(スコリア)による土質の特性を踏まえた対応や、毎年のように発生する土石流や豪雨災害への対応といった、防災面でも重要な役割を担っています。
私たちの業務の根幹は、現地調査・測量から始まり、地域のニーズ、住民の声に応えながら、実現可能で持続可能な計画をつくりあげることにあります。決して派手ではありませんが、「この街に住む人が、より安全で快適に暮らせるように」という強い思いを持ち、日々まちづくりに取り組んでいます。
川崎国際環境技術展に参加

2024年、私たちは川崎で開催された「川崎国際環境技術展」に出展しました。これは、富士宮市が実施する「中小企業新技術新製品出展事業費補助金」という制度を活用する形で、はじめての県外展示会への参加でした。
きっかけは、私が所属している静岡県中小企業家同友会の富士宮支部が中心となり活動している未来創造塾が、富士宮市商工振興課からの委託を受け、川崎市と連携して取り組んでいた「富士宮市中小企業相互交流促進事業」でした。この事業を通じて、展示会の情報が届き、「出てみませんか?」とお声がけいただいたのです。当初は、自社のような土木設計の会社が出展する意味があるのか不安もありましたが、市の担当の方々に後押ししていただき、挑戦を決めました。
私たちが展示したのは、UAVレーザー、地上型レーザー計測機器を活用した最新の測量技術です。特に、森林伐採をせずに空から地形を高精度で把握できるレーザー測量や、災害時に迅速な状況把握が可能なドローン活用を紹介・展示しました。来場者には大学生や他の技術系企業の方も多く、当社の取り組みに関心を示していただきました。
展示会への出展を通じて得られた最も大きな成果は、業務内容や課題意識を共有できる企業とのつながりを築けたことです。お互いの強みを活かした協業体制が実現し、これまでにない規模のプロジェクトを受注することにもつながりました。地域に根ざした機動力と、広域的な連携の可能性をあわせ持つことで、新たな展開の糸口を掴むことができた貴重な経験となりました。
ビジコネ活用で広がった地域企業の可能性

この展示会への出展にあたり、申請や連携の過程でビジコネの支援を受け、今回のような展示会出展や技術提案において大きな後押しとなりました。
特に心強かったのは、市の商工振興課の担当者やビジコネのコーディネーターの方々が、書類作成やマッチングの相談に親身になって対応してくれた点です。補助金の情報提供だけでなく、「こういう出展形式であれば、他社との協業の可能性が広がるのではないか」といったアドバイスもいただきました。
実際に、自社単独では実現が難しかった大規模な公共業務も、他企業との連携によって受注に至ったという経験は、この取り組みの意義を強く実感させるものでした。大手企業の高度な機材や実績に対して、当社のような地元企業が持つ機動力や地域密着型の強みが評価され、補完関係として成立する。こうした連携は、地域企業同士のつながりが新たな事業展開につながる好例と言えるかもしれません。
また、展示会では来場者との接点を通じて、当社の事業内容や理念を直接伝えることができました。中にはドローンや3D計測技術に興味を持った学生さんもいて、将来的にも良い効果がありました。単なる出展ではなく、地域発の技術力を伝える場としての展示会に、ビジコネがうまく橋渡しをしてくれたことに感謝しています。
四代目としての継承と挑戦

私自身はこの会社の四代目にあたります。創業者は祖父で、父が二代目でしたが、私が入社して1年半ほどで急逝してしまい、現会長の支えもあり、私が事業を継承することになりました。もともと私は外国語大学を出ており、入社当時は土木に関する知識は全くありませんでした。しかし、地域のために働くという意義や、社会に必要とされるインフラづくりの重要性を日々感じる中で、自分なりの覚悟が芽生えてきました。
継承において意識したのは、「自分の色を出しつつ、社員とともに会社を築いていく」という姿勢です。私が特に意識しているのは、社員が安心して働ける環境づくり。手当制度を見直したり、年間休日を107日から120日に増やすなど、福利厚生の充実を図ってきました。こうした取り組みが実を結び、離職率も下がってきたと実感しています。
また、技術継承のためにも、若手人材の採用に力を入れています。高校への出張授業や会社見学の受け入れ、ドローンや3Dモデリングといった最新技術を活用したPRなど、若者が魅力を感じる環境づくりを意識しています。最近では、横浜から移住して入社してくれた新卒社員もおり、地域の魅力を発信することの大切さを改めて感じています。
私は、武田信玄の『人は城』という言葉がとても好きです。会社は創業家のものではなく、働く社員一人ひとりのものであり、彼らが誇りを持って働ける環境をつくることこそが、経営者の最大の役目だと思っています。まだまだ道半ばですが、「この街になくてはならない会社」であり続けられるよう、社員とともに一歩づつ歩んでいきたいと思います。
事業者情報
- 事業者名:富士設計株式会社
- 住所:〒418-0022静岡県富士宮市小泉468番地の1
- 電話番号:0544-26-5191
- ホームページ:https://fujiarchitect.co.jp/
- X(旧Twitter):https://x.com/_fujisekkei
- Instagram:https://www.instagram.com/fuji_sekkei/