地に足をつけながら「ここにしかない価値」を作りたい

ビジネスコネクトふじのみや(以下、ビジコネ)で、事業計画書の作成をサポート。

  • CHAM(チャム)
  • 業種:美容・飲食・小売業
  • 創業:昭和39年

通い続けたくなる場所を目指して

もともとこの場所には、私の母が営んでいた化粧品と雑貨のお店「チャム」がありました。長年、地元のお客様に親しまれてきた店舗ですが、高齢となった母とも相談し、この店舗を今後どう活かすかが課題となっていました。

私自身は以前からカフェ運営に関わる仕事をしており、また地域活動にも積極的に携わっていました。一方で妻は美容師として、店舗勤務から訪問カットまで幅広く経験を重ねてきました。あるとき、福祉施設に訪問カットへ行った妻が「高齢者の方が『美容室に行きたい』と言っている」と教えてくれたことが、ひとつの転機となりました。「施設でではなく、美容室に行きたい」という声をいただいたとき、外出そのものに意味があるのだと実感しました。

こうした想いが重なり、「この場所にユニバーサルな美容室をつくろう」という構想が芽生えました。「チャム」を拠点に、美容室・カフェ・化粧品の3業態を融合した新しい空間づくりが、地域に根差した“通い続けたくなる場所”として少しずつ形になっていきました。

三業態で育てる「地域の小さなコミュニティ」

現在、私たちは美容室・カフェ・化粧品の3業態を同じ敷地内で運営しています。それぞれ業種は異なりますが、どの店舗にも共通しているのは「居心地のよさ」と「対話のある接客」を大切にしていることです。

たとえばカフェでは、一人静かに読書を楽しむお客様もいれば、スタッフや常連さんとのおしゃべりを楽しみに訪れる方もいます。その人その人の時間の流れに寄り添い、過ごし方を尊重する接客を心がけています。美容室においても、ただ髪を切るだけでなく「心がほぐれる空間」を意識しています。鏡越しに交わす言葉ひとつで、お客様の表情がふっと和らぐ瞬間を大切にしています。
また、化粧品店は母の代から続いていることもあり、昔からのお客様が多く通ってくださっています。肌の悩みや日々の体調などについても、気軽に相談していただける関係が築かれており、一人ひとりに寄り添ったアドバイスやお手入れの提案を大切にしています。こうした3つの業態が、それぞれの役割を果たしながら、地域の小さなコミュニティを育んでいます。

富士宮という場所柄、観光客の来店もあり、なかにはバックパッカーの外国人旅行者がふらっと立ち寄って「こんな場所があるなんて!」と驚かれることもあります。観光地の喧騒とは違う、地元の人と自然につながれる空間。そこには、日常の中で心がほどけるような価値があります。

ビジコネとの出会いとその支援

新しい事業を立ち上げるにあたって、最初の大きな壁となったのが事業計画書の作成でした。頭の中では「こんなことをしたい」「こういう空間をつくりたい」というイメージが明確にあるのですが、それを人に伝わるかたちで文章化し、説得力を持たせる作業には思った以上に時間と労力がかかりました。

そうした中、支援機関の紹介で出会ったのがビジコネです。毎週のように相談の場を設けていただき、事業の方向性や課題を一緒に洗い出しながら計画を練り直す日々が続きました。やがて内容も磨かれ、無事計画書は完成。さらにビジコネでは、金融機関や行政との橋渡し役も担っていただき、実際に具体的な支援へとつながっていきました。親身になって向き合ってくださる姿勢に背中を押され、「自分たちの事業が地域にとって必要なものだ」と実感できたことは、精神的な支えにもなりました。

「諦めない気持ち」が形になるまで

創業にあたっては、想像以上に多くの手続きや調整が必要で、途中で心が折れそうになることもありました。しかしそんなとき、ビジコネの担当の方が「最後まで一緒にやりましょう」と声をかけてくださり、その言葉が何度も私たちを支えてくれました。

「今やらなければ、もう次はない」そんな諦めない気持ちがこうして形となり、大変だと思わず楽しみながら前を向き続けた結果が、徐々に実を結んで来ています。

規模は小さいかもしれませんが、誰かの心に残る存在であることには意味があります。これからも、地域に根ざしながら挑戦を続け、ここにしかない価値を育てていきたいと思います。

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