変わり、守る、伝統の酒造り

ビジネスコネクトふじのみや(以下、ビジコネ) にて、補助金の申請・販路開拓・その他資料作成等のサポート。

  • 富士正酒造株式会社
  • 業種:酒造業
  • 創業:1866年(慶応2年)

富士正酒造の考える日本酒

富士正酒造は、1866年、慶応2年に創業しました。江戸の末期から続いている酒蔵です。元々は上野の土地にありましたが、2012年4月に「あさぎりフードパーク」に移転オープンしました。創業時は佐野酒造場という名前でしたが、昭和の時代に法人化をして、2024年には「魚がし鮨グループ」に入り、新たな体制で進めています。
お酒へのこだわりとしては、ただがむしゃらに誰が飲んでも美味しいお酒というよりは、日々の晩酌の中でほっと一息つけるようなお酒を造りたいというのを目標にしてきました。何がなんでもどこかで一番を獲るとかではなくて、自然に日常に溶け込んでいるというような、暮らしに寄り添った形の日本酒を目指しています。いろいろな人にその喜びを味わってもらいたい一方で、お酒のことを知らない方も多くいらっしゃると思います。 日本酒は飲んでみないと味が分からないというのもあるので、まずは試飲をたくさんしていただいて、うちのお酒のどれがあなたに合っているのかを確かめてもらいたいです。日本酒を全然飲んだことのない方でも、何でも飲んでいますというような玄人の方でも、富士正の酒を知らなかったという方に試していただきたいですね。ここの蔵に併設している売店でも試飲ができますし、全部のお酒を試してもらっても良いんです。そこで新たな発見をしていただいて、その人の生活を彩るということになれば嬉しいです。

多彩なお酒が生む新しい価値体験

女性の方にも飲みやすいお酒や、高級志向のものなど、いろいろなお酒を取り揃えるようにしています。純米大吟醸を使った柚子酒や、リキュールがとても人気なので、まずは入門としてそこから入っていただくと良いかなと思います。日本酒を飲まない方でも、「ここの柚子酒が美味しかったから他の日本酒を贈り物で使おう」という形に繋がってくれたらとても良いですね。全ての相乗効果を考えつつ、商品展開を進めています。
最近は「若者のお酒離れ」とか言われていますけど、私はあまり感じていないんですよ。ここの売店に入ると結構みんなお酒飲むじゃん!って(笑)。日本酒以外にも焼酎やスピリッツなども造っているので、いろいろな人が飲めるお酒を展開してることも強いのかなと思います。普段絶対にお酒飲まないのよって言いながら入ってくる方もいるんですが、酒粕とか桃ジュースを買っていってくれたりとか、甘酒のスムージーを飲んでいってくれたりとか、いろいろな商品があることは強みですね。「ここに来たら絶対に満足させます、お酒へのイメージを変えさせます!」ということを目標にしています。ここの売店は、お客様に直接販売するというだけじゃなく、そういう新しい価値体験を提供するという意味でもしっかり機能していると考えています。

お客様と一緒につくりあげる「時代に合わせた変化」

元々は日本酒だけを扱っていましたが、昭和40年代くらいに蒸留機を導入して焼酎が、その次は昭和50年代くらいに梅酒から始めてリキュールが加わりました。上野の精進川の梅を使って梅酒を仕込んでいたのですが、その当時から「日本酒仕込み」を謳っていて、日本酒をベースにした商品として色々と展開してきました。今度、その日本酒から出た酒粕を使った焼酎仕込みに変えてリニューアルの予定です。その方がすっきり飲めて、時代の流れにも合わせて造り変えてる途中ですね。柚子酒も低アルコールの5%にしていますし、だんだん日本酒も15度が受け付けられなくなってくると思っているので、度数をどう調整していくかや、現代の人たちの飲みやすさを改めて考えたりというのは、時代に合わせてやっていかなくちゃいけませんね。歴史のある会社や酒蔵には昔からずっと守り続けてきた伝統がありますが、その中でも変化をさせていかなければと思います。日本酒は伝統的酒造りとしてユネスコの無形文化遺産に登録されたりと、取り巻く環境が変わり続けているからこそやらなきゃいけないこともありますし、変わってないから良いとされる部分もあると思うので、軸はぶらさずに、ちょっと遊べるところは変化をつけて、フレキシブルに対応できたらと考えています。
酒蔵自らが直接お客様に販売できる場所が増えているというのも、ここ30年くらいで世の中すごく変わったのだなと思います。今は当たり前になっていますが、ネット通販で酒蔵が直送できるというのも昔は珍しかったです。酒屋さん経由じゃなく直接お客様が酒蔵に来て、しかも試飲で味も分かった上で買えるというのは、ものすごく販売の機会が広がったなと思っています。それにその場でお客様の反応が返ってくるのを感じられるのは良いですね。試験製造品の試飲とアンケートも行っているのですが、お客様の反応を見ながら、いろいろご意見やご要望やアイディアなんかをいただいて、次の試験製造に反映させていくというサイクルです。お客様がどういうものを飲みたいかという市場も分かるし、年代や性別のデータも拾っているので、直接のマーケティングがしやすいというのは大きな収穫ですね。

ビジコネで受けた支援について

補助金申請と販路開拓の支援をしていただきました。小規模事業者持続化補助金と経営力向上補助金、経営革新もお願いしました。今は業務改善助成金も申請しているところです。販路開拓は、日本酒やリキュールの販路の開拓として、商談会の設置と専門家派遣のお願いもしています。物産展の参加もエントリーさせてもらいました。経営力向上補助金では、頒布会の企画を含めた形でホームページの改善リニューアルを行なっています。日本酒の頒布会って昔からありましたけど、今はサブスクという名前でこういう販売形式がまた一般的になってきていますし、その頒布会で富士宮の食材を使ったおつまみになるようなものを、日本酒とセットで全国に向けてご案内していく形をイメージしていて、それの構築をお願いしているところです。

支援を受けてよかったと思う点

支援や補助金の申請については、書類を作ってこちらでできる範囲で書いて、それを添削してもらいました。数字に関する部分はやっぱり難しいのでお任せしました。申請が通りやすくなるポイントを押さえるということについては、やはりプロにお任せするのが一番だと思うので、私は伝えたい気持ちをぱっと書くというような形にして、それを添削していただいています。
酒蔵での毎日のいろんな仕事をやりながらの補助金申請になってしまうので、スケジュール管理が難しいんです。同時にいろんなことを進めていくと、途中で何が何だか分からなくなってしまうのですが、その都度やるべきことや作業の優先順位を教えてくださって頭の中がスムーズになっていくので、すごく助かっています。
元々は私たちも補助金申請は自分たちだけで行っていました。何が良いのか悪いのか分からないまま書類を作って、たまたま受かって「あぁ、良かった。通ったね」というような感じだったんです。でもビジコネを利用して相談させてもらって、書類の内容を的確に直していただくことで、しっかり説得力のある内容に仕上がっていれば申請も安心感があります。
あとは、やりたいことがあるけどどんな補助金が使えるのかというのを、自分で一から調べるのってすごく大変だと思うんです。使える補助金の内容や、資金調達の方法など、本当にいろいろと教えていただけるので、まず相談に行ったら良いと思います。とにかく何か夢を語れば、あとは船に乗れるというような話です。経営計画をしっかり全部まとめて持っていくとかではないので、すごくハードル低く活用させてもらえるサービスですよね。「集客で悩んでいる」という一言だけでも、いろいろなことを提案していただけると思うので、そういったことのお悩み相談の窓口の一つとして一歩踏み出せたら良いのかなと思います。相談員さんたちは皆さんプロですから、たとえ自分たちで何とかできそうなことだったとしても、相談してみたらもっと良いやり方が見つかるかもしれません。

200 年続く会社を目指して

社会では「持続可能」という言葉も飛び交っていますが、私の中で「200年続く会社に」というのを一つの目標にしています。今が創業160年目くらいなので、あと40年をいかにスピード感を持って、この時代に即した形で日本酒蔵として残っていけるかということを考えています。全国を見ても200年企業ってなかなかないと思いますけど、その中でも酒蔵は日本酒文化としても残っていけるように、まずはこの先の40年を突っ走るというところに力を注いでいきます。今いる従業員もあと40年なら皆さんまだご健在かなというのもあって、今のメンバーが自分が働いていた場所を誇りに思えるような会社にしたいですね。実際はそれが一番の今やっていくべきことであって、その先に200年続く会社があると信じています。

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