富士宮のサツマイモの発信拠点に

ビジネスコネクトふじのみや(以下、ビジコネ) にて、補助金申請のサポート。
- 有限会社かくたに
- 業種:製造・卸業
- 創業:1928年(昭和3年)
事業の大転換

有限会社かくたには昭和3年創業です。今年97年目で、もうすぐ100周年です。あさぎりフードパークが2012年にオープンしたタイミングで工場を建てて、新たにサツマイモの加工を始めました。今は干し芋や芋けんぴの製造・販売を行なっていますが、それまでは富士山グッズを扱う卸売業の会社だったんです。グッズを仕入れたり、オリジナル商品を作って富士山の山小屋などに納めるという仕事をずっとやってきました。干し芋も富士で作ってもらったものを仕入れて道の駅などで販売していましたが、これも卸販売のみでした。あさぎりフードパークへの事業参入を考えたときに、建てられるのは食品工場のみという制約があることを知り、それなら販売できる食品を自分たちで作ろうということになりました。卸売の干し芋は年々仕入れ販売数が増えてきていたので、それを自社製造に切り替えたのが始まりというところです。製造については全く初めてのことで、農家さんに教えてもらいながら作り方を考えていきました。農家さん仕込みの方法なので、一般的な乾物工場とはやり方が違うんです。普通は初めに芋を蒸すのですが、うちは茹でて柔らかくなった状態で皮を剥くという手順です。一般的には芋をピアノ線を張った所に通して切ったりするのですが、茹でると柔らかくてこれができないんですよ。なので包丁で1枚1枚、手作業で切っています。その後干していきますが、うちは天日干しなので3日から5日ぐらいかかります。本当に昔ながらの製法で作っていて、これは相当手間ひまが掛かりますが、機械を使わず自然乾燥した方が美味しく仕上がると思います。
試行錯誤で作る芋けんぴ
開店当初は干し芋の生産能力しかなかったのですが、干し芋は冬から春ぐらいまでの期間しか作れないので、夏はどうしようということになって、じゃあ何か作ろうと考えたのが芋けんぴでした。今では主力商品になっています。機械を揃えて新たな工事を加えて、一からのスタートです。当初は工場にフライパンを4台ぐらい並べてその中で味付けをしていましたが、5年間ぐらいは生産が全然追いつかなかったんです。機械の展示会で筒状の鍋をくるくる回転させてチャーハンを作る機械を見て思いつき、試してみたらうまくいったので、今はこのチャーハンの機械で味付けをしています。飴の中にドボっとつけて、乾燥機で周りをコーティングするのが一般的な作り方なんですが、うちではくるくる回転させながら混ぜるので、砂糖と水で作る飴が粉状になって付くんです。薄付きという感じなので、揚げたての食感とサツマイモの味がしっかりと感じられます。うちのように小規模で芋けんぴを作っている所がなかなかないので、本当にいろいろと試行錯誤しながら作っています。
地元への想いとこだわり

使っているサツマイモは基本的には地元の契約農家さんのものです。特に芋けんぴはカリッと揚がるように硬めの「紅あずま」を専用に作ってもらっています。紅あずまは焼き芋にすると栗のような感じの芋なのですが、最近は柔らかい芋が主流になってきているので、生産農家さんがどんどん減っているんですよ。ただ、うちはどうしても芋けんぴのために硬い芋が良いので、お願いして作ってもらっています。
地元のものにこだわっているのですが、富士宮がサツマイモの産地というのが今はまだあまり認知されていないと思うんです。ここの売店に買いに来られる方は観光の一見さんが多いこともあって、富士宮のサツマイモのことをご存知ない方がほとんどですし、「何でここでサツマイモを?」とよく言われます。富士山の火山灰の土地がサツマイモの生育に合っているということを色々説明すると興味深げに聞いてくれますし、こういうところから富士宮のサツマイモの価値を上げていきたいと考えています。芋以外の原料も静岡県産にこだわって、味付けに使う塩やわさび、紅茶なども地域の事業者さんのものを使っていて、いろいろな味の芋けんぴを取り揃えています。
小規模だからこその強み

先日さつまいもフェスタというイベントを開催したのですが、5年ぶりに作った新作の芋けんぴ2種類をお客様に試食をしながら投票してもらって、得票数の多かった梅味を新発売しました。これは初めての試みだったのですが、お客様の反応を直接感じることができて良かったです。
それと、芋けんぴの製造体験ができるのもうちの特徴です。おそらく日本でうちだけだと思います。皮むきから始めて、袋詰めするまで大体1時間半ぐらいですね。ファミリー層が多いですし、どなたでも安心して参加できますよ。
元々は営業職だった私にとっては、芋の加工製造は大きなチャレンジでしたけど、今は売店で販売しているスイートポテトやプリン、カヌレなどのお菓子を全部私が作るというくらいになりました。パティシエ・営業・配送全て兼ねた工場長という感じです(笑)。調理などの経験も勉強も全く何もしてこなかったですから、クックパッドでレシピを見ながら、サツマイモをどう加えて作るかというのを試行錯誤しながら続けてきました。年2回、3,4品ぐらいは新しい商品を作ります。すごく大きくて完全にシステムが決まっている工場などよりも、いろんなことにチャレンジして柔軟に発想できることは、小さい工場だからこその強みだと思います。お客様の要望やお好みをすぐに商品に反映できたり、製造体験を提供できることもそうです。お客様との距離が近くなることでファンの方もついてくれますし、常連のお客さんを大事にしています。市街地から遠い所なので、なかなか常連さんというのも難しいのですが、一度食べたらここの味じゃないとだめだ、他の芋けんぴは食べられなくなったなんて言われることもあります。
生産能力の課題とビジコネの支援

芋けんぴは全社員総動員で作っていますが、全て手作業でとなるとどうしても大量には作れないので、販売の機会損失が出てしまうのを残念に思っていました。そこで今回ビジコネを利用して、商工会議所さんの協力で補助金を申請して、新しい芋用のカッターを導入したんです。去年から使い始めて、とても作業効率が上がりました。カットした後に細かい芋のかけらをより分ける選別作業があるのですが、そのかけらもカッターのおかげで出にくくなって、材料の無駄も減らすことができました。
カッターを導入する前までは、毎週売り切れる状態が続いていて、特に長期連休のときは製造が全然間に合わなかったりしたのですが、お陰様で何とか継続的に販売できるようになっています。この生産能力の改善というのを、ずっと課題として抱えていました。卸先はあるのに今までほとんど断っていて、95%は自社での販売になっていました。それがようやく今年の10月から東京と大阪に店舗のある会社に卸せるようになったんです。やっと県外に飛び出すことが出来ました。ただ、やっぱり一般的な芋けんぴと比べるとどうしても値段が倍ぐらいになってしまいます。これは食べてみていただかないとなかなか分からない部分なのですが、全て手作りで地元のものにこだわっていることがブランド価値として定着していってくれたらと思います。
ビジコネを利用してみて
今回ビジコネを利用して経営力補助金を申請させてもらいました。生産能力改善のために芋用のカッターを導入するという目的がはっきりと決まってから、商工会議所さんに相談させていただきました。購入したい機械も、使いたい補助金も自分の中で決め切った状態でした。その後は、必要な書類や書き方なども全部教えてもらえたので、スムーズに申請できました。こういう公的な文書は難しくて苦手なのですが、本当に細かく丁寧に書き方を教えてくれるので助かりました。経営者さんや創業をお考えの方は、使わないのがもったいないというぐらいの手厚い補助だと思います。自分で全て揃えるのは本当に大変なので、ぜひ一度相談に行ってみてほしいです。補助の仕方にもいろいろあると思いますし、自分がよく分からなくてもしっかりサポートしてもらえますので、 安心して行って大丈夫ですよ。
富士宮のサツマイモを発信

最終目標は『桃鉄』(ゲームソフト:桃太郎電鉄)の富士宮駅に芋けんぴ屋さんを作ってもらうことです。これまでテレビへの出演なども目標としてありましたが、ある程度達成できたので、次はもっと大きく富士宮のサツマイモをPRしたいという思いです。「富士宮と言ったら芋けんぴだよね」というぐらいの認知度まで持っていきたいですね。そのためにもどんどん外に出ていかなければと考えています。さつまいもフェスタは自分達で開催しているので、外部のイベントにはあまり出たことがないんです。特に土日は忙しくてここを離れられないのでなかなか難しいのですが、そういうところにも出店して、市外、県外へと富士宮のサツマイモを広めていきたいなと思っています。東京と大阪への販売も始まっていますし、今はその第一歩を踏み出したというところですね。まずは100周年へ向けて頑張っていきたいです。
事業者情報
- 店名:有限会社かくたに
- 住所:〒418-0101 静岡県富士宮市根原449-19
- 電話番号:0544-52-0102
- 営業時間:9:00~16:00
- 定休日:木曜日(12月〜2月)
- ホームページ:https://www.e-kakutani.com/
- Instagram:https://www.instagram.com/bengoshiclub/
- X(旧Twitter):https://x.com/kakutani_imo